夕凪の街桜の国こうの 史代

ふんわりとしたやわらかいタッチの絵で、
原爆投下から10年経った
ヒロシマを舞台に、ひとりの女性の日常が淡々と描かれている。
こどものころ読んだ「はだしのゲン」は、その直接的な描写がおそろしくて、とくに1巻は1度読んだきり開くことができなくなって、でもいまだにあの絵が眼に焼きついている。
「こわい」「見たくない」なんて言っちゃいけない。知っておくべきこと、目を逸らしちゃいけないことだとはわかっていて、でもやっぱり、こわかったんだ。
「夕凪の街…」は、
原爆のおそろしさ、悲惨さを、直接描いているわけではない。
なのに、読んでいて胸がつまる。くるしくなる。
涙も出ない。
読み終えたあとも、胸の奥にずしりとしたものが残っている。
おそろしさやむごさよりも、圧倒的な哀しさを感じた。
原爆が壊したものはヒトの心。そして、それはまだ終わっていない。
わかっているのは「死ねばいい」と
誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
そしていちばん怖いのは
あれ以来
本当にそう思われても仕方のない
人間に自分がなってしまったことに
自分で時々
気づいてしまうことだ
嬉しい?
十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」
とちゃんと思うてくれとる?
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